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メディア掲載|「こころ豊かで安全な経営とは何か」

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【日経BP 武蔵野小山社長】
株式会社武蔵野 小山昇社長の「こころ豊かで安全な経営とは何か」

2010年10月8日 「棚卸しで誤差が出るのは当然」と放置してよいのか
わたしは時々、「小山さんは悩みなんてないのでしょう」 といわれることがあります。 なるほど、会社は10年間連続して増収増益。 セミナーや 講演会を開けばいつも満員御礼。 著作はよく売れる。そういう現象だけ見ればすべてが順風満帆で、 「小山に悩みはないのだろう」と感じるのは当然です。

しかし、わたしも人並みに悩みは抱えています。 ミスジャッジは今でも頻繁にあり、 時には自分の甘さに気づいて深刻な自己嫌悪に陥ったり、 他の素晴らしい社長を見て敗北感に打ちのめされることもある。 実は、つい最近もそういうことがありました。

我が社の主力事業はダスキンの代理店業務です。 本社・支店の倉庫にはたくさんの在庫があり、 定期的に棚卸しをしています。 すると(これは我が社に限ったことではないと思いますが) 棚卸表の数字と実数に必ず誤差が発生する。 困ったことですが、それが特に問題だとは思いもしませんでした。 「人の手で作業している以上、ある程度の誤差が出るのは仕方がないことだ」 という固定観念があったからです。

そんな固定観念を砕いたのは、関西に本拠を置き、 ネットショップの配送センター代行で急成長を遂げている 「関通」の存在でした。同社はお客様から書類や商品などをお預かりして 保管・梱包・出荷・運送の管理を主業務にしています。 倉庫に保管しているものはお客様の財産ですから、誤差など当然あってはならない。

関通は3万種類、12万点もの商品を管理しているのですが、 果たして在庫誤差はゼロだということでした。 せいぜい3000くらいの商品点数でも誤差を出している我が社とはまさにけた違いです。

「当たり前」の中にこそ改善の余地がある

関通は、商品の保管・管理において、 ライバルとは一線を画した独自の方法を採っています。 詳しいことは機密に属するので書けませんが、 倉庫はこの上ないほど整理整頓が行き届き、 効率的に商品が出し入れできるようになっている。 だからお客様は同社の倉庫を見るだけで契約してくださるのだとか。 本来ならバックヤードであるはずの倉庫が、 実は何より雄弁なショールームになっているというわけです。

もちろん関通も、最初から高度な商品管理ができるように なったわけではありません。 お客様のクレームを受けては改善し、 勉強会に出かけてはまた改善しという積み重ねで誤差ゼロを達成できたのです。 中でも大きかったのは、我が社のセミナーで環境整備を学び、 そのノウハウを倉庫の管理に応用したことだったそうです。 いや、驚きましたね。「先生」の顔もかたなしです。 わたしと関通の達城久裕社長の格の違いを見せつけられた思いでした。 わたしが在庫の誤差を認識しつつも放置していたのは、 どこかで「(在庫は)自社で仕入れたもの」という考えもあったと思います。 自社の金で仕入れたんだ、数が合わなくてもお客様には迷惑はかからない、 というような。しかしこれは端的に甘えです。たとえ誤差はわずかでも、 それが会社の利益を圧縮している事実は変わらない。 決して看過していい問題ではないはずです。 人は、ひとたび「これが最高だ」「それが当たり前だ」と思いこむと、 もはや検証することもありません。 しかし実は、その「最高」「当たり前」の中にこそ改善の余地や ボトルネックが潜んでいるものです。 経営者たるもの決して慢心することなく、怠らず改善を重ねていかなくてはなりません。 今回の関通の事例はわたしの襟を正す非常にいい機会になりました。

そんな素晴らしい仕事をしている関通ですが、 では悩みがないのかといえば実はそんなこともないのです。 先般わたしは同社の達城社長とラスベガス研修でご一緒したのですが、 彼はわたしにこんな悩みを打ち明けてきました。 「実は最近になってクレームが増えてきたのです。どう対処したものでしょう」と。

12万点もの商品をひとつの間違いもなく管理できる会社にクレームとは、 にわかには信じ難い話です。 達城社長としても自社のサービス品質には相当の自負を持っている。 それだけにクレームが発生する理由がわからない。

しかし、実はクレームが多発している理由は簡単なのです。 「お客様が増えたから」です。新しいお客様は、まだ関通に馴染んでいない。 それだけに針小なことがらも棒大に捉えてしまい、 クレームに発展してしまう。 それだけのことであって、決して同社のサービス品質に不満があるわけではないのです。

だとすれば対応は簡単です。新規のお客様には、 場数を踏んだベテランに対応させればいい。 不慣れなお客様に不慣れな若手社員を充てるからこそ行き違いが生まれ、 ひいてはクレームになってしまうのです。 その後、同社は私の助言を受け入れ、クレームは激減したとのことです。
うまくいっている人、うまくいっている会社には、 必ずうまくいっているだけの理由があります。 だとしても改善の余地もボトルネックも皆無という会社はないし、 悩まない経営者も存在しないのです。

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